イギリスの黒ビール

イギリスのエールビール・種類、伝統、歴史をご紹介:おススメの黒ビールは?

投稿日:2019年7月3日 更新日:

イギリスのエールビール・種類、伝統、歴史:おススメの黒ビールは?
イギリスのエールビールって、種類はどれ位あるの?歴史は古いの?そもそも、なぜビールがぬるいの?教えて下さい。

意外と馴染みが無いのが、この英国生まれのエールビール。

我々日本人にとって、ビールと言えばキンキンに冷やしたラガータイプのビール。

だから、常温で飲まれるエールビールは「?」・・・。

こちらでは下記ポイントを踏まえて、そんな『イギリスのエールビール』について解説していきたいと思います。

・エールビールは、なぜ常温で飲まれるのか
・リアルエールとは
・エールビールの種類

イギリスのエールビールとは

イギリスのエールビール

「イギリス」と一言で言ってしまうと語弊が生まれます。

ご存じの様に、イギリス(英国)はUK(united kingdom of great britain and northern ireland)。
すなわち、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4つの異なった国(文化)から成り立っているからです。

そして、そこで飲まれるエールビールにも、伝統や歴史と言った「文化的違い」が存在します。

エールビールが常温で飲まれる理由とは

常温で飲まれるエールビール

パブ文化の発祥の地であり、エールタイプ(上面醗酵)のビールが主流であるイギリス(英国)。

とは言え、日本では余り馴染みが無いエールビール。
普段我々が飲んでいる国産のビールは、殆どがラガータイプ(下面発酵)のビール。

その為、ビールと言えばよく冷やして一気に飲むのが定番!

ビール=喉越し』を味わう、と言っても過言ではないのではないでしょうか。

しかし、その正反対にあるのが、このエールビールなんです。

幾度と常温で飲まれるこのタイプのビールは、主に樽詰めにされ、パブなどの地下室で二次発酵させます

その期間は約1週間ほど!
そう、短期間で醸造できるのも、このビールの特徴なんです。

ただ、最初にこのエールを口にすると、余り美味しさが感じられないのも事実。

何とも歯切れの悪い?と言いますか、日本人好みのパンチの効いたドライ感が感じらません。

また、冷やして飲まないという点がチョッと抵抗感を感じるようで・・・。

しかしこのエールビールの良さは、「飲み続ける事によって解る奥深さ」にあるようです。

よく言われいるのが。
3杯目から旨さを感じるビール!
なのだとか・・・。

確かに、アイルランドのスタウトも余り切れのあるビールだとは言えません。

しかし病み付きとなり、愛飲してらっしゃる方が多いのも、その証拠です!

エールビールを常温で飲むとどう違うのか!?

ぬるいエールビールは旨い!
Image by chongodog from Pixabay

その理由は、ズバリ『香り』にあります。

グラスに注ぎ、口を近づけるとフワッと感じられる芳醇な香り。
これがエールビールの醍醐味!

先述の通り、エールビールは『上面発酵』で醸造されます。

これは、温かい温度で発酵させているため、最高の状態で味わうには、常温、もしくわ地下室で熟成させた温度そのままで飲むのが最適だとされているのです。

また、もう一つの理由として、地域性も挙げられます。

イギリスを含む主なヨーロッパ諸国は、日本などアジア諸国に比べて「涼しい地域」に当たります。

その為、飲み物をキンキンに冷やすと言った習慣が余りありません。

まさに、「ビール」を常温で飲む行為は、この地域の人々にとっては当たり前の事だという事です。

イギリス エールビールの歴史&伝統

イギリス:エールビールの歴史

エールビール発祥の地、イギリス(英国)。

しかし、ラガービールが誕生する以前は、全てがエール酵母(上面発酵酵母)によってビール造りは行われてきました

そして、今現在でも多くの国々で愛飲されています。
その理由は?

産業革命に乗じて、イギリスが世界に進出していき、それと共にイギリス生まれのエールビールも世界中に広まって行ったからです。

なぜ、イギリスはエール大国となったのか!?

それは、『ホップ』にあります。

海を挟んだドイツでは、抗菌作用に優れ爽やかな苦みを生み出す良質なホップがビール醸造に使われる様になり、瞬く間にヨーロッパ全土へと広がって行きました。

また、ラガービールの誕生と共に、エールビールの醸造はラガーに取って代わって行ったのです。

方やイギリスでは、自前で良質なホップを栽培する事が難しいという現実がありました。
どうも、土壌の関係によるものらしいのですが・・・。

また、当時抗菌作用や苦みの原料として使われていた『グルート』と呼ばれる薬草は、役人による専売特許として管轄されていたので、ホップの輸入が禁じられ、必然、イギリス人はエールビールへの考察を深めていく事となります。

そんなホップも、17世紀以降にはイギリスでも解禁となり、ビール醸造に使われる事となりますが、1歩も2歩も(数百年)出遅れた感は否めません。

また、当時のラガーブームにも背を向け、更にエールビールへの拘りを深めていく事となります。

ホップを用いたものを「ビール」。そうでないものを「エール」と分けていたようです。

イギリスで愛されるリアルエールとは

リアルエール:真のエールビール
Image by Paul Houston from Pixabay

イギリスでもラガービールは造られていますが、やはりビールと言えばエールビールを意味します。

特に、イングランドやウェールズではエール。
そして、スコットランドやアイルランドではスタウトです。

そして、他の国の人が何と言おうとも、パブの地下室で適度(約13℃ほど)に貯蔵された「冷たくないエール」が、エールビールの醍醐味でもあります。

そんなエールビール(上面発酵)には、真のエール(リアルエール)と呼ばれるイギリス伝統の醸造方法で造られるエールビールがあります。

真のエールビール

このリアルエールとは、若いビールを生きた酵母と共に樽詰して2次発酵させたものを指します。

まさに、パブの地下室で眠っているのが、このリアルエールなのです。

そして、パブの主人である醸造主(又は地下室の管理人)が、地下室の温度管理や余分な炭酸の排出、そして熟成期間の見極め等を行って、『生』のエールをお店で提供します

そう、そのエールこそ「真のエールビール」なのです!

因みに、イギリスのエールビールの殆どがパブやクラブ、レストランなどで『生ビール』として消費されます。

その割合は、全体の7割強!
まさに、これが世界一の『エール大国』と言われる所以です。

この伝統的な樽内熟成醸造は、CAMRA(Campaign for Real Ale=伝統的なリアルエールを愛する会)という団体の地道な啓発活動によって守られてきました。CAMRAが存在しなかったら、樽内熟成エールは存在していなかったかも知れません。

エールビールの種類

エールビールの種類

さて、一口にエールと言っても、そこには色んなタイプのエールビールがあります。

ラガーを拒絶?し、独自路線を貫いた英国のビール文化。
そんな歴史ある土地では、どんなエールが生まれてきたのでしょうか・・・。

イングランドのエールビール

イングランドのエールビール

・ポーター
・ペールエール
・ブラウンエール
・イングリッシュ・スタウト
・大麦(バーリー)ワイン

ポーター

ポーターは労働者のエールビール

ポーターという名の由来は2つありますが、その2つとも「運び屋(=ポーター)」から名が付いたとされています。

ポーターの由来:その①

前項でも記載したように、エールビールとはパブの地下室で貯蔵され熟成されます。

店頭に出される時は、地下室から運んで生のエールを提供していた訳ですが、産業革命以降、効率化を図る上でも工場などで大量にエールビールは醸造されました。

その際、今まで無かった配達というスタイルでの供給が行われるようになり、運び屋が持ってくるエールという事で「ポーター」と呼ばれる様になった説です。

ポーターの由来:その②

もう一つのポーターは、港関係の労働者(運び屋)に愛飲されていたエールビールだったので、ポーターと呼ばれる様になったという説です。

ポーターの歴史

さて、その誕生なのですが、実ははっきりとは解っていません。

1700年代初頭に現れたとされていますが、醸造技術などが記された文献類が存在しないのが理由の一つです。

また、大きな2つの世界大戦に見舞われ、殆どが消滅してしまったのがもう一つの理由です。

因みに、最もオリジナルポーターに近いと言われているのが、ベル醸造所が1722年に造っていたとされるエールビールです。

このエールビールは、顧客に提供する為にペールエールやオールドブラウン、若いブラウンエールなどをブレンドして造られていました。

そして、このエールビールがポーターの起源だと言われています。

ポーターの特徴

ポーターの特徴
Image by Steve Buissinne from Pixabay

このエールビールは、エキス濃度が非常に高く、17度以上あったのではないかと言われています。

また、透明感は無くコーヒーの様な芳ばしい香りと、上面発酵酵母による果実の風味が強調されたエールだったようです。

スタウトの様なクリーミーな泡は無く、ボディも軽めで辛口の味わいだったとも言われています。

ペールエール

ペールエールとは、淡色系のエールを指し当時飲まれていたポーターの様な濃色のエールから比べると、そのブロンズ色に輝く色合いは非常に斬新であったと思われます。

因みに、瓶詰されて提供されているエールを『ペールエール』と言い、樽詰めされたまま熟成されているエールを『ビターエール』と称するようです。
詳細は後程で。

ペールエールの歴史

ペールエール発祥の地:バートン・オン・トレント

ペールエールの誕生は、英国のホップの歴史とリンクします

上面発酵の独特なフルーティーさに爽やかな苦みが加味された味わいは、まさにホップ(ドライホッピング)無しでは造れないエールビールと言えます。

しかし、英国にホップが入って来たのは17世紀頃で、ペールエールは比較的歴史の浅いエールビールと言えます。

最初に知れ渡る事となったのは、ミッドランズ州トレント川流域にある『バートン・オン・トレント』という街で醸造されていたペールエールです。

実は、この地がペールエールの発祥の地であるとも言われています。

また、トレント運河を利用して北海やバルト地域へとエール市場を広めるのには、絶好の場所だったと言えます。

その為、ロンドンのポーターは、必然とバートンのペールエールと競い合う事となるのです。

エールビールで一番有名なビール醸造所。それが『バス社』

フォリー・ベルジェールのバー

1200年代からビール醸造が行われていたというバートン。

そんなエールの地で最も有名な醸造所が、『バス社』です。

バス社のトレードマークでもある三角の赤いマークは、実は世界最古のトレードマークとも言われており、あのフランスの画家『エドゥアール・マネ』が1882年に描いた最後の作品『フォリー・ベルジェールのバー』の中にも描かれています。

ビターエール

樽で熟成されるビターエール
Image by Brigitte Werner from Pixabay

その名の通り『苦い』エールを指しますが、これもペールエールの一つです。

このビターエールは、バートンユニオンシステムという醸造方法で造られたペールエールを指します。

このシステムは、木製樽を連結させた独自の樽で発酵を促す方法で、熱処理されず酵母が糖分を最後まで消化してしまう事により、苦みとドライ感をエールに加味させる働きがあります。

しかし、このバートンユニオンを採用しているのは、今現在ではマーストンズ社のみとなりました。

因みに、この醸造方法によって生み出された『苦み』を指して、「ビターエール」と呼ばれるようになったそうです。

その一方、瓶詰され熱処理されたエールを一般的にはペールエールと言います。

とは言え、最近では瓶詰されたエールも「Bitter(ビター)」と表記されているモノが多く見受けられます。

インディアン・ペールエール(IPA)

インディアンペールエール:IPA

18世紀頃と言えば、ちょうど英国がインドを植民地化していた時代です。

そうなると、自ずとペールエールも輸出対象品としてインドへ送られる事となります。

とは言え、当時は冷蔵技術や長期保存方法などが無く、また船上での長旅(約5ヶ月程)に加え、赤道直下の横断などによって腐敗が進み、インドに到着する頃には商品価値が無い!何てこともあったようです。

そこで、雑菌効果にも優れていると言われるホップを通常の何倍も投入し、船上でも熟成が継続するよう麦芽の量も増やし高濃度で醸造されるペールエールを輸出したのです。

その為、このインディアン・ペールエールはアルコール度数が高く(約9%ほど)、甘さが殆ど感じられない苦みとドライ感が一層際立った味わいとなりました。

ブラウンエール

名前の通り、濃い色合いが特徴のエールビール。

麦芽をより焙燥させる事によって、非常に濃く濁った色合いを造り出しています。

ブラウンと表現されていますが、我々日本人からすると黒に近いでしょうか。

ブランエールの歴史

このブランエールは、1600年代頃にロンドンでこう呼ばれる様になりました。

しかし、それ以前からイギリス全土で幅広く醸造されており、地域によって色の濃さや苦み、甘味などが違い独特な味わいを楽しむ事が出来たようです。

ただ、ホップが効いた淡色系のビールが造られる前は、全てのエールが濃色系のビールであり、そう考えればブラウンエールの歴史とは、エール誕生の歴史でもあるのではないでしょうか。

ブラウンエールの特徴

ブラウンエールとアップルパイ

ブラウンエールは、「デザートビール」とも呼ばれています。

ビール本来の香りは、もともとデザートには不向きだとされていました。

しかし、その独特な甘みと苦みの抑えらえれた味わい。そして、アルコール度数が低くエキス濃度も抑えらえたブラウンエールは、アップルパイとの相性が非常に良いとされています。

そんなブラウンエールの中でも非常に個性的だと言われているのが、イギリス北部にあるサミュエル・スミス社が醸造している「オールド・ブルワリー・ストロング・ブラウンエール」です。

通称『ナッツ・ブラウン』とも呼ばれ、麦芽の風味に加えナッツの様な芳ばしい香りも楽しめるブラウンエールです。

また、イギリス北東部の街ニューキャッスルでは、ワインの様な芳醇な味わいを楽しむ事が出来るものや、ホップの苦みが少し効いた辛口のブラウンエールがあります

イングリッシュ・スタウト

イングランド(英国)で醸造されているスタウトであり、スウィート・スタウトとも呼ばれ、甘味が強調された英国式スタウトです。

そして、スウィート・スタウトの代名詞と言えば、『ミルク・スタウト』。

ミルクスタウトの特徴と歴史

ミルク・スタウト

ミルク・スタウトは、その名の由来でもある『乳糖(ラクトース)』が、醸造過程で2度加えられているのが特徴です。

最初の煮沸段階で1度入れられ、2次発酵時に再度投入されます。

それにより、芳醇な甘さが加味されたスタウトとなるのです。

ミルク・スタウトの起源は1900年代初頭、ケント州ハイスにあるマケソン醸造所で生まれたとされています。

牛を放牧させるため、その道すがら醸造内を通り抜けなければならず、許可を得て自由に行き来していました。

そんな折、醸造主がふと「ミルクをスタウトに入れてみたらどうなるだろうか・・・。」と言う発想を抱いた事から、このミルクスタウトが誕生したそうです。

オートミール・スタウトの特徴

オート麦(エンバク)

スウィート・スタウトには、もう一つ代表的なものがあります。

それが『オートミール・スタウト』です。

大麦麦芽のほか、オート麦=燕麦(エンバク)と呼ばれる麦を原料に用いたスタウト。

糖化の工程でオート麦が加えられ、柔らかな甘みが加味されます。

濃厚でクリーミーな味わい。そしてチョコレートの様な芳ばしい香りと甘みが特徴的なスタウトです。

1950年代に一度消滅しましたが、80年代に入りサミュエル・スミス醸造所が復活させ、その後数社が醸造を行っています。

代表的なオートミール・スタウトの一つに、ヤング醸造所が造るヤングス・オートミール・スタウトがあります。

大麦(バーリー)ワイン

大麦ワイン/バーレーワイン

ビールの主原料は、ご存じの様に「バーレー(barley)=大麦」です。

そんな大麦で醸造されたエールビールを、高アルコール度数の「ワイン」の様な奥深い味わいにしたのが・・・。

大麦ワインです!

ストロングエールとも呼ばれるこのビールは、低いものでも7%以上。高いものになると十数パーセント以上ものアルコール度数となります。

では、なぜこの様な高濃度のビールが出来るのでしょうか!?

これはビールでは珍しく、数か月から長いもので年単位の間、樽の中で熟成されるからです

まさに、ワインの様な醸造過程です。

ワインの様なビールを造った理由

そもそも、何故このようなビールをイングランドでは造られる様になったのでしょう。

その理由は、フランスやイタリアなどの気候風土とは違い、ブドウ栽培に適さずワイン醸造が行えなかったという事が挙げられます。

まさにバーレーワイン(大麦ワイン)は、ワインへの「憧れ」から誕生したエールビールでもあったのです。

バーレーワイン(大麦ワイン)の特徴

大麦ワインは樽で熟成される

バーレーワインと一言で言っても、その色合いは様々です。

スタウトのような透明度の無い真っ黒な色合いもあれば、透き通った美しい琥珀色などもあります。
*SRM24~SRM40の色あい

また、このエールビールの特徴でもある味わいは、芳香であればあるほど良いとされ、長期熟成によって生まれるトフィーの様な甘味と、ブランデーやコニャックを連想させるような風味は、まさに「複雑な味わい!」と言えます。

バーレーワイン(大麦ワイン)は、その醸造期間の長さから集荷量が少なくコストも掛かるため、流通量が極めて少ないエールビールでもあります。

その中でも、イギリスで広く流通しているのが、缶ビールとして販売されている『Gold Label/ゴールドラベル』。

Gold Label/ゴールドラベル

低温(約10℃)で2か月あまり熟成された、エキス濃度24.5度の淡色系のバーレーワインです。

また、この複雑怪奇なエールビールは、日本の地ビール会社でも醸造されている事に少し驚かされます

それが、『サンクトガーレン:el Diablo 2015(エル ディアブロ/悪魔の意)』です。

サンクトガーレン:el Diablo 2015(エル ディアブロ/悪魔の意)

醸造所 サンクトガーレン有限会社
商品名 el Diablo 2015(エル ディアブロ/悪魔の意)
原料 麦芽・ホップ・酵母
アルコール度数 10.00%
生産地 神奈川県
受賞歴 2007年インターナショナルビアコンペティショ銀賞
2008年インターナショナルビアコンペティション金賞

本場イギリスのバーレーワイン(大麦ワイン)を楽しむ事は難しいですが、日本人の好みに合ったバーレーワイン(大麦ワイン)を堪能できる事は、非常に有難いことです

スコットランド・アイルランドのエールビール

スコットランド・アイルランドのエール

・スコティッシュ・エール
・スタウト

スコティッシュ・エール

スコットランド 首都 エジンバラ

スコットランドの首都・エジンバラは、ヨーロッパを代表する醸造都市の一つです。

スコットランドと言えば、先ずは『スコッチウイスキー』を思い出すでしょう。

しかし、エールビールにも麦芽の香りが強調された独特なビール文化が育まれています。

スコティッシュエールの特徴

スコティッシュエールの特徴としては、濃厚且つコクが感じられる麦芽の風味と、苦みが抑えられた味わい。
そして、濃色系の色あいにあります。

特に、大麦を活かした芳香な香りが代名詞と言っていいエールビールです。

ただ、イングランドの「ブラウンエール」とよく似たエールビールとも言われ、実際両方出されるとどちらがどちらなのか解らなくなる程。

それ程、この2種類のエールビールはよく似ているのです。

その理由の一つは、地域性にあります。
どちらも良質な大麦栽培が可能であった反面、ホップ栽培には適さずその殆どを輸入に頼っていた点が挙げられます

スコットランドは大麦栽培に適している

その為、ホップの使用を抑える事となり、逆にモルト風味の豊かで苦みの抑えられたエールビールが造られるようになったのです。

しかし、ブラウンエールとスコティッシュエールには大きな違いがあります。

それは「醸造方法」です。

原料となる麦芽は、淡色系のモルトと濃色系のモルトをブレンドして用いられます。
また、ブラウンシュガーなどを副原料として用いるのも特徴です。

その他、低温で比較的長い時間を掛けて発酵させる為、ビールには相応しくないとされる『フェノール臭(薬品臭)』が加わりますが、この香りがスコティッシュエールの独特な芳香を特徴付けています。

スコティッシュ・エールの分類方法

スコティッシュエールは、エキス濃度の違いによっても呼び方が変わってきます

下記で示したのは、イングランドで一般的に分類されるエールビールのタイプを、スコットランドで置き換えた場合の名称です。
*()内はエキス濃度を表しています。

イングランド スコットランド
マイルド ライト/60シリング(7.5度以上)
ビター ヘビー/70シリング(8.8度以上)
プレミアムビター エキスポート/80シリング(10度以上)
バーレーワイン ウィー・ヘビー(21度以上)
因みに『シリング』とは、古い貨幣の単位の事を指し、いつしか麦芽濃度を示す名称になったものです。また、スコティッシュエールには、このシリング表記がされています。

スコティッシュエールも流通量の非常に少ないエールビールです。

その為、その殆どがスコットランド国内で消費されます。

その理由は知名度にもよるのでしょうが、「人気が無い・・・」といった理由も一つです。

やはりビールには、ホップによる苦みと爽やかさが不可欠と思っている人が多いという事でしょうか。

その為、世界中に広まったIPA(イングリッシュ・ペールエール)などは、同じぐらいエキス濃度が高いのに、ホップの苦みが加味される事によって、多くの支持を得る事となったのです。

スタウト

アイルランド 首都 ダブリン

アイルランドのエールビールと言えば、世界中で愛飲されている『スタウト』。

そして、アイルランドで代表的なスタウトと言えば、首都ダブリンにあるギネス社です。

スタウトの歴史

ギネススタウト
Image by disneygirl0618 from Pixabay

ギネス社は、1759年に設立され当初はポーターをメインに醸造を行っていました。

ロンドンスタイルと言われる古典的なエールでもあったポーターは、イギリスの他の地方にも広がりを見せ、アイルランドにも伝わって行ったのです。

しかし、ペールエールの誕生により一気にその分布図が入れ替わり、ポーター醸造は陰りを見せます。

そして、そのポーターの歴史が脈々と受け継がれる事となったのが、『スタウト・ポーター』。

すなわち、スタウト(エクストラ・スタウト)なのです。

ポーターとスタウト・ポーターの違い

スタウト・ポーター。
すなわち『強めのスタウト』という意味であり、ポーターよりアルコール度数が高く、甘みが抑えられスッキリとした味わいが特徴です。

そして、醸造過程においても違いがあります。

ポーターは、焙燥された麦芽を原料に仕込まれていきますが、スタウト・ポーターの場合は、ペールエールで使われる淡色麦芽をベースにして、真っ黒に燻された麦芽をスペシャルティーモルト(色、味、そして香りをビールに付け加える麦芽)として添加します。

そうする事により、ペールエールのようなスッキリとした味わいと、ポーターのように深みのある味わいを併せ持ったエールビールとなったのです。

スタウトの特徴

アイルランドのエール:ギネススタウト

「ギネスは常温で・・・」。

その独特な甘さとコク、そしてポーターから受け継がれた芳醇さを味わうには、常温で味わうのが一番です。

しかし、ギネスのドラフトは冷やしても格別!

熱処理していない『生』のスタウトは、回転率が速いためアイルランドではどこで飲むギネスよりも旨い!と言われています。

では、ギネスドラフトとギネス・エクストラスタウトの違いとは?

ギネスドラフトは、上記の様に「生」を表し、小売店やスーパーなどでもよく見かける「缶のギネス」もそれに当たります。

しかし、「生」なのにどうして缶ビールなのか?という疑問が沸いてきます。

これは、ギネス社が社運を掛けて開発した『フローティングウィジェット(缶の中に入っている球体)』によって、缶でもドラフトの様なクリーミーで新鮮な味わいを楽しめる様になったからです。

フローティング・ウィジェット

スタウトの命とも言えるあのクリーミーな泡立ち(カスケードショーと呼ばれる)は、まさに小さな滝(カスケード)の様に、グラスの周辺部から落ちて行く様が非常に美しいとされています。

そして、そのドラフトでしか味わえない「泡」をこのボール(フローティングウィジェット)によって、家庭でも手軽に造り出す事が出来るようになったのです。

方やエクストラスタウトは、瓶内熟成された瓶入りのギネススタウトを指します。

こちらは、言わば『元祖』と言えるスタウト。

ギネス・エクストラスタウト

アーサー・ギネス2世が、ポーターを醸造する為の詳細を記述。そのレシピを基本として造られたのが、このエクストラスタウトです。

250年余りの歴史を忠実に受け継ぐスタウトでもあります。

また、ドラフトとは違ったキレの良さと、ポーターから受け継ぐ芳醇な味わいを楽しむ事が出来ます。

スタウトはギネスだけではない!

アイルランドでは、ドライ・スタウトを造る醸造所は幾つかあります。

その代表的な一つが、『マーフィーズ』です。

マーフィーズ アイリッシュスタウト


1856年に創業したアイルランドのコーク州にある醸造所で、地元アイルランドではギネスと二分する程の人気があります。

元々、ウィスキー造りにも力を入れていた醸造所でしたが、80年代半ばにハイネケンの傘下となり、増産体制が強化され、今現在では世界80か国以上で販売されるようになりました。

マーフィーズでは、アイリッシュスタウトと呼ばれるスタウトが造られ、製麦されていない大麦を副原料として用いて醸造が行われています

マーフィーズの特徴としては、先ず、しっかりとしたコクと香ばしい香りが挙げられます。

そして、スタウト独特とも言える「ドライ感」や「キレ」と言ったものが無く、コーヒーの様な苦みの効いた、ある種伝統的な味わいが楽しめるスタウトとなっています。

ある意味、独特な歴史を歩んでエール大国となったイギリス。土地柄、ラガービールの決め手となるホップや、ワイン醸造に欠かせない葡萄の栽培が出来なかった背景が、この独自のエール文化を育んだ要因ともなっているようです。常温で飲むビール。確かに、日本人にとっては馴染みの無いビール文化。しかし、一度ハマると「沼」の如く抜け出せなくなるかも・・・。じっくり味わうビールも良いかも知れません。

『イギリスのエールビール・種類、伝統、歴史をご紹介:おススメの黒ビールは?』は以上となります。

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